159 味覚と聴覚でサリエリを探る。

 159 Salieri: The 2 Piano Concertos etc.
ピエトロ・スパーダ(ピアノ)フィルハーモニア管弦楽団
Pietro Spada(piano)The Philharmonia Orchestra

(上記リンクから音源に飛びます。)
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 今年から、(たまにですが)音楽にまつわる本も、音源とともにご紹介していこうかなぁと思っております。
 今回はアントニオ・サリエリについて。
 きっかけは以前荒川智美さんのフォルテピアノでのモーツァルト・魔笛にまつわる演奏会に出かけた時、モーツァルトも間違いなく食べたであろうお菓子のレープクーヘンが公演後に配られました。(この時の公演については下記ブログエントリーにも書いています。モーツァルトの変奏曲と共にお愉しみ下さい。)
 その時製作者である遠藤雅司さんのご説明とともに、サリエリにまつわる著作が売られていたので、面白そうだからと買ってみました。こちらの書籍です。
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宮廷楽長サリエーリのお菓子な食卓: 時空を超えて味わうオペラ飯 単行本(ソフトカバー) – 2019/11/29

 サリエリは映画アマデウスでの、まるでモーツァルトを殺したのは自分だと言わんばかりのお話の影響も強くて「悪役」的なイメージもつきまとう作曲家ですけども、最近ではゲーム作品にも登場して、そちらの方面からもご興味を抱いた方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
 「宮廷楽長サリエーリのお菓子な食卓」ではサリエリの生涯を穏やかに追いかけつつ、18世紀の料理やお菓子、サリエリが好んだであろう甘味をレシピと共に写真で並んでいます。勿論ご自身で作ってみることも可能です。
 読み物としても大変読みやすく、音楽のことをよく知らなくても18世紀のヨーロッパを旅したような気分にもなりましたよ!

 本から伺えるサリエリの生涯はドラマチックな内容というよりも、後進の指導や自作以外の点でも当時のヨーロッパ音楽界を表から裏から支え、とても堅実な歩みのように見受けられたのですけども、それでも生前からモーツァルトを毒殺したのではないか?という噂がたってしまい晩年はとても気の毒な印象を抱きます。
 実際のところはモーツァルトはとても強力なライバルのひとりであったんだろうけども、同時に敬意を抱いてもいたのではないかという感じを受けます。それは本から読み取れる彼の活動からも、2曲のピアノ協奏曲を網羅したこの音源からも伝わってくるのではないかと思います。
歌劇「オラース兄弟」序曲(1786年)
ピアノ協奏曲ハ長調(1773年)
歌劇「セミラーミデ」序曲(1782年)
ピアノ協奏曲変ロ長調(1773年)
スペインのラ・フォリアによる26の変奏曲 ニ短調 (1815年)
 いや、サリエリの2曲有るピアノ協奏曲聴いていると、むしろモーツァルトがサリエリからの影響を受けているんじゃないかという気分すらあるのですが…。(サリエリ作曲年時彼は17歳。ただリンク先のエジプトの王ターモスや交響曲など既に大がかかりな作曲活動をしていたりもします。最初のピアノ協奏曲5番を作曲したのもこの年1773年です)二人は既にこの時からお互いの作品について意識していたのか、気になります。

 そして最後の「スペインのラ・フォリアによる26の変奏曲」が凄いというか、変奏曲なのに長大!これ是非コンサートで聴いてみたいなぁ…😌
 誰もが聴いたことがあるだろう旋律が色々な形でドラマチックに展開していく音楽はとにかくユニークです。ぜひ一度聴いてみて下さい。

 リンクはサリエリのピアノ協奏曲と同じ1773年に初稿が作られたモーツァルトの「エジプトの王ターモス」全曲と(これもまたドラマチックですよ!)オペラ序曲といえばこれまた多彩で、一体どんな演目なのかと気になるハイドンのオペラ序曲集をどうぞ。
 こうして集めてみると、古典派の作曲家の作品が随分とバラエティに富んだものなんだなぁと気付かされますね。

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