97 ノクターンの先駆者、フィールド。

 97 フィールド:ノクターン全集
エリザベス・ジョイ・ロエ(ピアノ)
Elizabeth Joy Roe(piano)

(上記リンクから音源に飛びます。)

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  先週の土曜日~日曜日にかけて、浜松市楽器博物館にて「オーストリア・伝グラーフモデル」と「イギリス・ブロードウッド」のフォルテピアノを用いた2つの演奏会に出かけてきました。
 土曜日の山名敏之、朋子ご夫妻のシューベルト連弾日曜日の小倉貴久子のベートーヴェン両方共、とてもキラキラしていて素敵、なのに大迫力の響き。一方残響が豊かになった現代のピアノではこの音形は成し得ないかもしれないなぁという驚きの世界に満ちたものでした。
 伝グラーフの艷やかで優しい響き、ブロードウッドの強弱で異なる鍵盤の発音の魅力などは出来たら是非一度、あなたもコンサート会場で、実際の耳で体感して頂きたいと感激しています。(とはいえこういったご時世ですので、CDのリンクも貼っておきます。)
 下の画像は当日用いられた1802年製造ブロードウッドのフォルテピアノです。ピアノに足ペダルがはじめて採用されたものとなります。(二本の前脚についているものがペダルです)しかし今のピアノと場所が異なるため、実際に弾こうとするとちょっとガニ股気味になるそうです(それまでは膝にレバーがついていました)
 それで、そんなことを書きつつどうして今回はフィールドなんですか??ということですけども…小倉貴久子さんのアンコール曲がこのフィールドのノクターン2番だったからです。
 それまでのベートーヴェンの「悲愴」や「熱情」が感情のほとばしるパッション!!!というドライブの中に没頭する音楽と演奏だったものですから、このノクターンはそれとは正反対の、心地よく、顔を撫でるような爽やかな風のような世界に、緊張がいつの間にやら解きほぐされていく思いがしました。
 そして帰宅後一度フィールドのノクターンを全曲聴いてみよう!ということになったわけです。
・第1番変ホ長調
・第2番ハ短調
・第3番変イ長調
・第4番イ長調
・第5番変ロ長調
・第6番ヘ長調 「子守歌」
・第7番イ長調
・第8番変ホ長調
・第9番ホ短調
・第10番ホ長調
「ノクテュルヌ・パストラーレ」
・第11番変ホ長調
・第12番ホ長調
「性格的夜想曲:真昼」
・第13番ハ長調
「夢の夜想曲」
・第14番ト長調
・第15番ニ短調「無言歌」
・第16番ハ長調
・第17番ハ長調
・第18番ヘ長調
 ノクターン(夜想曲)というとショパンを思い出される方が多いかと思いますけれども、こういった形式を誕生させたのは彼より少し前の時代にロシアで活躍したアイルランド人、ジョン・フィールドなのです。
 フィールドは若い時にムツィオ・クレメンティの商売(クレメンティは作曲家だけでなくピアノも製造販売していました。丁度写真のブロードウッドとも時期が被ります)のデモストレーションに駆り出されていた時期もあり、短時間で顧客やピアノを買おうと考えている人たちに短いながらも心響く音楽が求められていた可能性がとても高く、そういった経験もこのノクターンという独特の形式を生み出したように思われます。
 とにかく全般として心地よさが絶え間なく流れてきます。リラックスしたいときにはうってつけですので良かったらお試しになってみて下さい!
 このブログではノクターン、フィールドよりも50年以上後に作曲されたフォーレのノクターン全集も取り上げています。こうなると今度は本家(?)ショパンの世界も体験しなくてはいけませんね…。
(フォーレのノクターンについては下記リンクをどうぞ。こちらも素敵ですよ!)

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