78 フェルディナント・リース。

78  Ries: Piano Trios
ベルリン・メンデルスゾーン・トリオ
Berlin Mendelssohn Trio

(リンクから音源に飛びます。)
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かげはら 史帆 著
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 ベートーヴェンは弟子を2人しか取らなかった(チェルニーとこのリース)というのは聞いたことがあったのですけども、リースについては正直お名前以外のことは知らなかったものですから、さてこんな不勉強な身にも西洋音楽の歴史が分かるんだろうか…?と不安になりながら読み出しましたけども、あれよあれよと頁が進んで一気に読み終えてしまいました。
 よくクラシック音楽は
・古典派(代表はハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン?)
・ロマン派(メンデルスゾーン、シューマン、シューベルト、ショパン等)
などの区分がなされますけども、登場人物の豊富さと意外な密接さ(ベートーヴェン家とリース家、更には、ハイドンをイギリスでプロデュースしたことでもよく知られるヨハン・ペーター・ザロモンの家がこんなに古くからご近所に根付いているとは知らなかった!!)とそれぞれの出会いと別れから、いやいや、やはり歴史というものは連続的であり急に様式が変わったわけではないのですね。
 なのだけども音楽の歴史としてこういった区分が成されるのは「フランス革命とその後のナポレオンによる欧州侵略と席捲(1789~1815辺りか)」による影響がある、というところがとても大きいのだな、というのが本からよく伝わってきます。
 ベートーヴェンはタイミングとしてはギリギリのところで既に世に成功していた(音楽界に発言力を持っていた)けれども、動乱の時代に突入してしまい、そうはいかなかった若者リースの流浪というか、戦争に追われながら生きることと表現する機会を求め、あちこち異国をさまようように移動しつつ(本を読んでいくと分かりますが、それはリースだけでなく当時の若い音楽家の殆どが世相に振り回されている形になっています。)タフに試みを続けて、各国で成功していたりするものの、(文字通り世界を股にかけておりすごく軽快な感じすらあるのに)同時に「ボン生まれの自分」のような故郷を忘れられない土着的感覚とも葛藤していたりする。
 そして次第に時代が落ち着き、気がつくと新しい若者、次世代の表現者が颯爽と登場してくるという…。
 勿論そういった追われる青春時代→世代交代への焦燥だけでなく、この混乱期の最中に生まれた「リースが間接的に関わってきた、現代にも受け継がれているクラシック音楽の色々」などにも読者は遭遇し、はっとさせられたりもします。多くの著名人と関わってきたひとりの若者の一代記として「今現代の社会にもこういうことってあるよね。」といった感覚とも委ねつつとても楽しく読む事ができました。良かったら皆様もどうぞお買い求めになってみて下さい。
 
 さて折角フェルディナント・リースの世界を本から満喫したのだから、更に掘り下げ充実させるためにも彼の音楽を聴き放題から探してみるか…となったのですけどもAmazonMusicUnlimitedですと”Ries”のキーワードでは全く出てこなくて、”Ries piano”や”Ries symphony”など、複数の単語を含めて探す必要があります。
 彼はヴィルトゥオーゾなピアニストでもありましたけども、ピアノ曲(ソナタや8曲の協奏曲)だけでなく、室内楽や交響曲など多岐に渡る楽曲を残しています。この機会に音源を幾つか聴いてみたのですけども、彼が音楽での成功を求め数カ国を巡っているように、作曲年代によって音楽の印象が全く異なるような気がします。
 それが一枚で明らかに分かるのがこのピアノ・トリオ集だったので取り上げてみました。
ピアノ三重奏曲第1番変ホ長調Op.2(1807年)
↑ベートーヴェンとの師弟関係が徴兵によって終わってしまった直後の作
ピアノ三重奏曲第4番ハ短調Op.143(1826年)
↑ロシア、スウェーデン、イギリスでの音楽生活を経てふるさとボンに戻ってきた時代の作
 この一枚だけで「古典派?」「ロマン派?」と脳内が行ったり来たりしますね^^;でもとても魅力的な音楽と演奏ですし、これは一度コンサートで聴いてみたいなぁ…。
 このアルバムを軸にして、私ももう少しフェルディナント・リースの世界を満喫してみようかと思います。

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