152 全てご馳走だったショパン。

 152 Chopin: Concertos for Piano & String Quintet
デイヴィッド・ライヴリー(フォルテピアノ)カンビーニ=パリ四重奏団&トマ・ド・ピエルフ
David Lively(fortepiano)Quatuor Cambini-Paris & Thomas de Pierrefeu

(上記リンクから音源に飛びます。)

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 今回は2021年12月2日(木)に北区王子の北とぴあ・さくらホールで行われた「小倉貴久子とめぐるクラシックの旅Vol.4~ノスタルジア・3台のフォルテピアノで辿るショパン愛と夢の軌跡」コンサートについての感想が中心になりますけども、せっかく「Amazon Musicのサブスクで聴ける音源を取り上げている」ブログですから、コンサートに行かれなかった方にもショパンのピアノ協奏曲「室内楽版」について幾つかの音源をご紹介し、その魅力が少しでも伝わればと記しておきます。
ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 作品21(1830年)※室内楽版
ピアノ協奏曲第1番ホ短調 作品11(1830年)※室内楽版
 先日ショパン国際ピアノコンクールが行われて反田恭平さんが2位受賞し、あちこちのニュースでも話題になりましたけども、私は正直な所あまり関心が持てませんでした。
 というのも…これは決してピアニストが悪いわけではなく、ショパンのピアノ協奏曲での「ピアノ以外の部分」がどうも取って付けたような演歌みたいで私は大変苦手なのです。
 今回も決勝の音源を一度は聴いてみたのですがピアノに入る前に脱落しました…。
 それを克服どころか、考えがそれこそ180度変わり、ショパンの協奏曲を大変好きにさせたものが、小倉貴久子さんが演奏するプレイエルのフォルテピアノによる「室内楽版」と呼ばれるものでした。
 弦楽がピアノの添え物のような伴奏にとどまらず、対等に、そしてもっとピアノと寄り添うように奏でられていくこの音楽はたちまち私を虜にさせたのです。
(残念ながらこちらはAmazonのサブスクにありませんので、気になる方はCDをお買い求めください。浜松市楽器博物館でも売られています。)

 ショパンの2曲の協奏曲「室内楽版」は(別に当時では珍しくもない話として)出版時ピアノと弦楽のパート譜だけでもバラ売りで販売され、弦楽のパート譜には実際の弦楽以外では補えない音の部分が小さく書かれていて、それらをなぞっていくとピアノ+弦楽五重奏でも演奏できるようになっていたということからおこっています。(詳しくは一橋大学小岩信治教授の著作”ショパンのピアノ協奏曲「室内楽版」”をどうぞ。リンクはpdfです)
 これは19世紀半ば当時はまだ録音物がありませんから、オーケストラでの演奏会以外のサロンや他の小さな集まりでも演奏できるように、という一種の補足といったところなんだと思いますが、ただ実際にショパンが協奏曲の室内楽版をリリースしていたわけではありません。
 このあたりは元のパート譜面を頼りに奏者などが色々研究される形となり、また別方向から、ショパンの手紙などを元に編曲されたピアノ+四重奏曲版が21世紀になってから出版されるようにもなりました。
 ですので「室内楽版」といってもどれを聴いても微妙にバージョンが違うのが大きな特徴です。
 近年ポーランド国立フレデリック・ショパン研究所がナショナル・エディションで室内楽版の楽譜を出版したのも、ケヴィン・ケナーとクシシュトフ・ドンベクが研究した上での「編曲」という形となります。
 ケヴィン・ケナー自身で弾いた音源はこちらになります。聴き比べにもどうぞ。
ケヴィン・ケナー(ピアノ)アポロン・ミューザゲート・カルテット、スワヴォミール・ロズラフ
Kevin Kenner(piano) Apollon Musagete Quartett & Sławomir Rozlach
(上記リンクから音源に飛びます。)
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 それでも私がデイヴィッド・ライヴリーの音源の方をメインに取り上げたのは…これは好みの問題に過ぎませんけども、一番の理由はエラール・ピアノの演奏によるものだったからです。やっぱりフォルテピアノの方がよりピアノと弦楽とが溶け込んで聴こえるように(私には)感じられるのです。
 …ようやくエラール・ピアノから小倉貴久子さんの話題に入れそうですけども😅このコンサートがどれだけ凄かったのかはこの拙い写真からどうぞ。
 …すみませんもうちょっとまともな写真なかったのかい?状態なのですけども😅
 画面左から1848年プレイエル製、1845年エラール製、1845年ヨハン・バプティスト・シュトライヒャー製のフォルテピアノが一度に集まり、ショパンの生きた時代や曲の雰囲気によって楽曲を弾き分けるという大変贅沢かつぶっ飛んだ内容のプログラムで、しかもどれも大変説得力をもって聴衆に訴えかけてくるのです。(プレイエルで雨だれ、エラールで英雄ポロネーズ、シュトライヒャーでバラード1番といった感じです。どれも凄い!)
 この3種のフォルテピアノは製作年こそ似通っているのですけども、仕組みなどが色々異なっており、音も随分違います。
 コンサート後半はショパン本人が一番好きだったというプレイエルのフォルテピアノを用いたピアノ協奏曲第2番の「室内楽版」でした。プレイエルのどこかくぐもったような柔らかい音色が、オリジナル楽器の弦楽演奏と共に合わさった時、ときめきが倍増した音楽となって心に飛び込んでくるのです。本当、心から感激した時間となりました。
 もうこれは実際に聴いてみないことには伝わらないかも知れませんね。皆さんも機会があれば是非コンサート会場へどうぞ!
「小倉貴久子とめぐるクラシックの旅」次回は再来年2023年2月18日(土)シューマン特集として開催されるそうです。シューマンのピアノ協奏曲全曲、奥様クララ・シューマンのピアノ協奏曲1楽章などこれまた盛りだくさんの内容となるそうなので、是非チェックしてみてくださいね😊
 リンクはショパンに纏わるもの、あと、クララ・シューマンのピアノ協奏曲も先取りして楽しんでください!

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