123 バレンボイム、6月3日の珍事に遭遇。

 123 Beethoven: Piano Sonatas Nos. 27-32
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
Daniel Barenboim(piano)

(上記リンクから音源に飛びます。)

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 いやー、びっくりしてサントリーホールから帰ってきました😂
 というのも、前回のブログで付け焼き刃のように予習していったのに、まるで役に立たなかった…のもそうなんですけども、今後もクラシック音楽ファンでは語り草になりそうな、まったくもって珍事としか言いようのないことが発生したからです。
「ダニエル・バレンボイム、演奏予定のプログラムを間違える」という驚きが!

 バレンボイムの東京公演は2種(追加公演含んで3日分)あり、
  • ベートーヴェン初期ソナタのプログラム(1番から4番)
  • 最晩年の後期ソナタの回(30から32番)がありました。
 6月2日と4日は後期ソナタ、そして3日は初期ソナタの日で、私は初期ソナタを平行弦のピアノで聴けることを楽しみにしてチケットを購入したのです。(その辺りは前回のブログに書いておりますので私の付け焼き刃ぶりも含めてどうぞ。)
 ところがバレンボイムさんが現れ、6方向くらいにお辞儀をして演奏が始まった…と思ったら、懸命に旋律を覚えてきたピアノソナタ1番じゃないのです😳めちゃくちゃ驚いたというか、私が行く日を間違えた?それとも一体何があったのかととにかく理解に苦しみました。
「これはいきなりアンコールだったりする??」とか何通りかの混乱を伴いながらしばらく聴いていくとようやく思い出しました。「そうだ、これは30番じゃないか!」と…。
 プログラムと全く違う曲が演奏されているというのに、さすが巨匠の演奏会といいますか、終わった後の拍手も凄かったですけれども、その後のヒソヒソばなしのような観客の動揺っぷりも中々見られないものでした。そしてそのまま31番も演奏され、休憩に入りました。
 もうここまで来て1番に戻ることはあるのか??と首をひねりつつ外でさわやかな空気を吸って戻ってくると、今度は流石に事前アナウンスが入り、後半は32番、そしてバレンボイムからの挨拶が終了後に入るという内容でした。

 今思えば、奇妙な出来事だったよなぁと改めて演奏会の事を思い返しつつ、今この音源を聴いております😂貴方も良かったらAmazonMusicUnlimitedでどうぞ。
ピアノソナタ第27番 ホ短調 作品90(1814年)
ピアノソナタ第28番 イ長調 作品101(1816年)
ピアノソナタ第29番 変ロ長調 作品106「ハンマークラヴィーア」(1819年)
ピアノソナタ第30番ホ長調作品109(1820年)
ピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110(1821年)
ピアノソナタ第32番 ハ短調 作品111(1822年)

 そして、私が元々お目当てにしていた平行弦のクリス・マーネとスタインウェイが手掛けた「バレンボイム・ピアノ」についてですけども、32番の2楽章に、このピアノでしか出来ないのでは?と思われるような純度の高い音が出てきました。ピアノとは思えないような(自分はオンド・マルトノを連想した)まるで宇宙との交信みたいな感じ。あまりにクリアで濁りのないくっきりした、でも一方で柔らかな輪郭を持った高音は、これだけで聴きに行って良かったかな、と思えるほどでした。
 是非バレンボイム・ピアノを一度、平行弦について理解の深いフォルテピアニストに演奏していただきたいものです。(ただ、特に低音部のパッセージと言える部分は逆に喧嘩しているような感じもしましたけども…)

 ただ信じられなかったのは(尤も、今回の間違い話もえらく信じがたい話ですけども)サントリーホールのお客さんが満員だったこと!!
 普段であれば巨匠の演奏会という評判もありプラチナ・チケットものなのでしょうけども、このコロナ禍です。他の演奏会では座席50%販売とか消毒、検温など凄くデリケートに対応しているのを何度も目の当たりにしているのに、今回のバレンボイム公演では入り口で消毒対応+マスク着用のアナウンスがあっただけ。
 さすがスタープレイヤーのコンサートだからなのか、ぎっしり二千人のお客さんも流石に演奏会中はシン、と静まり返っていたけれども、私の周りはコンサート以外ではおしゃべりしている方も多くいて、休憩中は席でじっとしていることが多い私もこれはたまらないと外へと退出しました。そしてフレッシュエアを吸って帰ってきた時は、その空気のよどみ具合に警戒心もとても上がりました。
 追加公演分である前日は半分のお客さんだったと確かTwitterで見かけていたからすっかりそのつもりでおりました。(でも自分は公演3日前くらいにチケットを買ったから、興行としては元々完売にするつもりだったのでしょうね。)
 招聘元の方、よほどバレンボイムで稼ぎたかったのでしょうか…と穿った見方をしてしまいます。

 そして演奏会後のバレンボイムさんのご挨拶にも疑惑の眼差しが…😑。
 「休憩中にプログラムがお客さんが聴きたいものと違っていたと分かった、ごめんなさい。」というのはまぁそうでしょうねと笑いを誘っていましたけれども、その後日本のファンや聴衆を褒めるような発言をされ、それで総立ち、スタンディングオベーションとなりました。
 …正直な所「ええ、皆それで感極まって立ち上がっちゃうの??」という印象です。
 確かにクラシック音楽界の出来事としては珍事であり、面白ネタとしてこの演奏会に立ち会えたことは興味深いものではあります。
 それに曲が当初と全然違うとはいえ、クリス・マーネの平行弦ピアノから繰り広げられる、発音がはっきり粒立ちした音の感じを聴けたという自分の目的も達成できたのだから演奏会自体は良かったんだけども…ただあの拍手喝采、プログラム間違っててもお詫びとちょっと褒めておけさえすれば、日本人チョロいんじゃないのと思われてそうな気すらしちゃいました…。ハイ。

 追伸
 自分がどうにかバレンボイムが弾き出した「明らかに1番でない曲」がピアノソナタ30番であることに気がついたのは、このエリック・ル・サージュの音源を聴いていたからです。といっても最初そうであると分からなかった位、バレンボイムの弾く後期ソナタとは随分趣が違うと思います。サブスクリプションならではの聴き比べとしてもどうぞ。

エリック・ル・サージュ(ピアノ)
Eric le Sage(piano)
(こちらも上記リンクから音源に飛びます。)
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コメント

ポー さんのコメント…
プログラムが違ったのは連絡ミスと見かけましたが、マエストロが間違えたのですか?
チーク さんの投稿…
ポー様

このブログでのコメントははじめてです。書き込みどうもありがとうございます。
真相は分かりませんが、と予めお伝えしてしつつ、昨日のことを書けば
バレンボイムさんは終演後のご挨拶冒頭「休憩時になって、お客様の求めているプログラムと違うものを弾いていることに気が付きました。ごめんなさい。」といったことを仰っていました。

だけども後で家族と話したのですけども(家族はコンサートには行っていません)
普通ゲネプロとかしないのか?昨日の追加公演とは違うプログラムでもあり、最終チェックとしてもピアノを触ったりしないのか?聴けば誰かが気がつくだろうに。
という話にもなり…そうだよなぁ。と思っていたりもします。
https://ebravo.jp/archives/85719
また東京ではこういうプログラムにした、という、4月に公演が決まった時の会見では上記のようなお話もありますのでまさかそれを忘れていたとは思えませんし、では演奏する日付を勘違いしていた?というのもちょっと変な気もします(昨日の後期プログラムはあくまで追加公演ですから、本来ならば初期→後期とプログラミングされますよね)

ですので実際のところは良くわからないのですけども、少なくともバレンボイムさんは昨日会場でそんな感じで仰っていました。
りぼんちゃん さんのコメント…
はじめまして。

私は今朝、オフィスに電話して「リハとかで誰も気づかなかったのか?」と質問しました。
電話に出られた方はシドロモドロで、「ちょっとそれは、よくわかりません。」とあやふやな答えが
昨日もロビーで返金を求めている方がいらっしゃいましたから(多分明日のチケットも購入されている方)、何らかの対応をしないといけませんよね。
チーク さんの投稿…
りぼんちゃん様

どうもこんにちは。ネットの孤島のようなブログに書き込みどうもありがとうございます。
そしてお話から察するに昨日私と同様の体験をされた方ですね。本当、びっくりしましたよね…。

りぼんちゃんさんは事務所にお電話されたとのこと、今回の招聘元は多分大きな事務所じゃなさそうですし、電話口の方はきっと状況把握されていなさそうですよね…。
気がかりなのは、この時点(15時過ぎ)で招聘元から昨日の件について、そして今日の公演内容などを全く発表していないことです。
招聘元HPで発表がある、と昨日のコンサートで言っていたのだから「昨日と今日の件についてはお知らせを少々お待ち下さい」とだけでもネットに書いておけば随分印象が異なります。でもそれすらなく音沙汰がまったくないのは今日公演に行かれる方にとっては不安になるばかりではないでしょうか。

私は今日の公演についてはチケットを買っていないので外野からの発言になってしまいますけども、今日の公演がまた違うプログラムになったら元々お目当てにしていた方がびっくりされてしまうと思うから、多分本日も後期ソナタのプログラムになるのではないかと思っています(逆に違っていたらそれは本当、伝説のコンサートですね^^;)

それとは別にもし昨日と今日が同じ内容であるならば、「コンサートセット券」を買われたお客様でご希望されている方には返金対応したほうが良いんじゃないかな…と、りぼんちゃんさんと同じようなことを思います。
同じ内容でも全然いい!という方も多くいらっしゃるのかも知れませんけども、一応違う内容を網羅しているということで公演を楽しみにされている方もいるはずですから…。

しかし本当、自分は今日関係ないのに、はやく今日の公演内容がアナウンスされてほしいとつくづく思います。
今日は荒天ですし、チケットある方のお住まい場所によってはそろそろ出かけないといけないタイミングですよね…。
チーク さんの投稿…
りぼんちゃん様 

度々すみません、このブログ主のチークです。
先程招聘元から昨日今日のことについてお知らせが出ましたね。
やはり今日の公演は予定通りの後期ソナタで、セット券をお求めの方でご希望の方は払い戻し受け付けます…なんですけども、これ、6月3日の公演の曜日が違う上に、払い戻し対象が昨日3日のチケットになっているんですね^^;
今日会場へコンサートを聞いた後でも払い戻してくれるのでしょうか…気になります^^;
(再訂正があるかも知れませんが)
https://tempoprimo.co.jp/archives/5486
りぼんちゃん さんのコメント…
チークさん

私のコメントにコメントして下さってありがとうございます。
チークさんのブログはパープルのお色が素敵ですね。
それにとても読みやすいです。

オフィスのホームページ、見ました。
6月3日の曜日が間違っているのに気が付くなんて、流石です!
きちんとブログを書かれる方は、ぼ~ッと生きている私とは違うなと思いました(笑)

私も一応楽譜を見て「予習」して行ったので、昨日はちょっとがっかりです。
バレンボイムさんも丁寧にお辞儀を何度もして、手を振ったり、日本人ヨイショして「ごめんね~」と口では言ったけど、だったらお詫びの印に「エリーゼの為に」でも良いので アンコールの一曲でも弾いてくれたら 少しはこちらの怒り(?)も収まったのにと思います。

一曲目が終わって、一度袖に戻りませんでしたっけ?
その時にスタッフが間違いを指摘して、最初からプログラム通りに演奏することも可能だったのではないでしょうか。
事務所のマネジメントも変だなぁと思ったり。
変と言えば、通訳の方のファッションもちょっと変わっていたなぁとか、時間が経つにつれて余分な事まで文句を言いたくなって来てる私です(笑)

彼は拍手がしつこかったのか、自らパタンとピアノの蓋を閉めてスタスタと去ってしまいましたね。
日本人は本当に優しいなあと思いました。

チークさん、これからもブログ頑張ってくださいね。

すみません、長々と失礼いたしました。
チーク さんの投稿…
りぼんちゃん様

いえいえ、こちらこそ大変ありがとうございます。
このブログに関しては今まで黙々と綴っておりましたから、珍事件のおかげとはいえコメントが頂けるのはとても有り難いことだと感じております。
ブログのレイアウトについてもお優しい言葉ありがとうございます。

曜日の方は後ですぐに直されていました^^;そして、SNSで見ている限りの話ですがセット券でなくても、初日(追加公演)+2日目、2日目+3日目のチケットでも持っていれば2日目の分は払い戻しの対象となるようで、これならば今日の公演も安心して楽しめたのではないかと思います。とりあえずその点では良かったです(本日は大絶賛だったようですね。)

そしてうまく書けないのですけども、もしも1曲目の時点で間違いが分かったのであれば、明らかに短期間で決断しなくてはならなかったと思うのですけども、ベートーヴェンソナタの後期3曲はセットで、特別な思い入れをアーティスト側も観客側もお持ちでしょうから、もうその時点で1番に戻すとかはあり得なかったのだろうと思います。

そしてファンサービスといいますか、アンコール代わりがあのご挨拶だったんだろうと^^;いや、一曲欲しいというりぼんちゃんさんのお気持ちも私は分かるのですが、多分あの3曲は皆さん大好きみたいですのでそれ以上の飾りを付けてしまうのは粋でない、とかお思いになる方も別に現れてしまうような気もちょっとしております…。
しかしああいった事がありながらブーイングの方が出なかったのは日本の人お優しいのかも知れませんね^^;

こんな辺鄙なブログですけども、またよかったらいらして頂けたら嬉しいです。励まし大変感謝です!