103 クリーマーでもクレーマーでもなく、クラーマー。

 103 Cramer: Piano Sonatas Played On Broadwood Grand Fortepiano
ジョン・コウリ(フォルテピアノ)
John Khouri(fortepiano)

(上記リンクから音源に飛びます。)

 ヨハン・バプティスト・クラーマーという作曲家をご存知でしょうか。
 …すみません、私は全くもって知りませんでした😅ピアノを習ったことのある方ならば「クラーマー=ビューロー 60の練習曲」という楽譜の中でご存知かもしれません。
 この練習曲集は、クラーマーが作った数多くの練習曲(元は84あったそう)を、後年リストの弟子でもあったハンス・フォン・ビューローがセレクト、編集したものです。ですのでこの楽譜を弾いたことのある方ならば実はお馴染みの方かも知れませんけども…。
 
 では私がどうしてこの音源を聴くこととなったかといいますと、タイトルにもあるようにブロードウッド社製のフォルテピアノを使われていることにありました。
 ブロードウッドのフォルテピアノは19世紀はじめにイギリスで開発された楽器です。そのアクションは現在のピアノにも通じるご先祖様でもあり(イギリス式アクション)また、史上初めてフットペダルが用いられた楽器でもあります(それまでのフォルテピアノは、膝にレバーがありそれを押し上げる形でした)


 ちょっと分かりにくいですけども、こちらがそのブロードウッドのフォルテピアノです。小倉貴久子さんがベートーヴェンを三台のフォルテピアノを使ってコンサートを行った時に「熱情」を弾かれたときのものです。真ん中よりも少し離れたところに二本のペダルがあるのが見えるでしょうか。
 私はこの時聴いた熱情の、ダイナミックな音の色合いの変化にとても惹かれて、AmazonMusicUnlimitedでもそういったものが聴けないか検索した時にこの音源を見つけました。でもクラーマーのことは全く知りませんでしたから、未知との遭遇に近かったのですけども、とても「エモ」を感じる音楽でしたので、名前を覚えられるかしらという不安😅から、一気に親しみを感じることとなりました。

ピアノソナタホ長調「ロンドンへの帰還」 作品62
ピアノソナタホ短調「侍女たち No.3」作品59
ピアノソナタホ長調「友情」
(ピアノ五重奏曲第2番作品69のピアノ版)
ピアノソナタ変ロ長調「侍女たち No.2」作品58
ピアノソナタニ短調 作品63
ピアノソナタヘ長調「中庸」作品74
ピアノソナタイ短調「アルティマ」作品53
 ベートーヴェンの名前も出てきている通り、クラーマーはベートーヴェン~初期ロマン派にかけてイギリスで活躍した作曲家(ご本人はドイツ生まれ)で、作曲だけでなくピアニストとしても他の作曲家の普及に貢献された方だそうです。
 ピアノソナタも沢山あるようですけども、何故かこの音源はタイトル付きのものが多く選ばれており、しかもそれを確認しながら聴くと「どうしてこういった題がついてるの?」と不思議な感覚を覚えるものが多いです。
 「侍女たちNo.3」の1楽章とかは…なんでしょう、侍女も人の子、はかない恋でもしたのかなぁ?という謎とともに、ドラマチックな旋律と、ブロードウッドの独特な世界観の変化を呼ぶキラキラしたペダル使いが非常にマッチしております。これは現代のピアノですとちょっと表現しにくいのではないのかと感じております。「アルティマ」の3楽章の怒涛のクライマックスも非常に聴きごたえがあります。
 全部通しで聞くと2時間以上ありますけれども、とにかく「エモい」ので、ベートーヴェンやショパン、リストあたりをお好みのピアノ好きの方は一度是非!

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