35 予習復習となったベートヴェンピアノ協奏曲1番


35 Beethoven: Concerto pour piano No. 1 & Symphonie No. 5

セドリック・ティベルギアン(ピアノ)/ エンリケ・マッツォーラ (指揮)/ イル・ド・フランス国立管弦楽団
 Cédric Tiberghien /Enrique Mazzola / Orchestre national d'Ile-de-France
 (リンクから音源の頁に飛びます。)
~この画面は広告です!~

 昨日セドリック・ティベルギアンのピアノリサイタルへ行ってきたのですが、昨日の予習でブラームスと、今日のこちらも聴き放題で聴いてから公演に臨んだことはある意味大正解でした。
 今回の曲目は
・ベートーヴェン「プロメテウスの創造物」の主題による15の変奏曲とフーガ変ホ長調(エロイカ変奏曲)Op.35
・ブラームス シューマンの主題による変奏曲嬰ヘ短調 Op.9
・ドビュッシー 12の練習曲

 でした。予習の時点で「最初なんかボンヤリと聴こえた」のは正解で、この方のピアノが奏でる音…タッチというよりもペダル使いなのでしょうか…は独特の長め残響がありました。それが録音にも反映されていたのですね。もしもそれを知らずにいきなりベートーヴェンを聴いたらものすごくビックリした可能性があります。
 ティベルギアン自身の表現としてはドビュッシーが大変素晴らしくて、流れるような響きをとめどなく表現するものすごいテクニックだけでなくて弱音がとても美しい。その余韻は実演ならではの体験で、ため息ですら外に漏れ聞こえそうな静寂とともに大変素敵な体験でした。
 ただこの方の美音をフルに活かせるのは「19世紀後半からの音楽に限られてしまうのではないか?」という気分になったのも確かです。

 というのもこの音源からしてもそうなのですけども、ベートーヴェンのコンチェルト1番、よりによってオーケストラの意向が「ガチンコのピリオド演奏」であり、協奏曲の時点ではまだお互いが接点を見出そうとしている様な感じがする(ソリストは残響を抑えようとして演奏している感じ、オーケストラはもう少しだけソリストに寄り添う印象)のですけども、カップリングの運命がもう、最近のオーケストラを聴き慣れていない方ですと「なんじゃこりゃあ!」となるくらいのノンビブラート的な演奏で、私などは「そこまでするならばガット弦のオリジナル楽器で演奏されたほうが…」と思ってしまうのですけども、ピリオド奏法が(勿論指揮者にもよりますけども)現代のオーケストラでも取り入れられるのはこの頃結構当たり前ともなりつつあるなか、あの長めの残響はピアニストの特色としては大変ユニークではあるものの、こういった時代に即したタイプの演奏には合わないのではないのかと疑念が残りました。
 そして運命のあとでアンコール的にティベルギアン独奏でベートーヴェンのフーガが入るのですけども、何だかピリオド奏法に解放されたかのような響きがしています(^_^;)
 ティベルギアンさんのピアノがどうこうというよりも、単に相性の問題だと思われるのですけども、これ、他の室内オケ(もしくはもう少し彼に寄り添ってくれる指揮者さん)ならば大変上品な仕上がりの作品集として成立したのにね、という気がしてなりません…。

コメント