30 ショパンには、フォルテピアノでしょう!

30 Chopin: Piano Concerto No. 2, Op. 21, Fantasy on Polish Airs, Op. 13 & Andante spianato et Grande polonaise brillante, Op. 22

エマニュエル・アックス(フォルテピアノ)/チャールズ・マッケラス(指揮)/エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団
  Emanuel Ax/Sir Charles Mackerras/Orchestra Of The Age Of Enlightenment
 (リンクから音源の頁に飛びます。)
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 昨日は国立市へでかけてきました。
 一橋大学国内交流セミナー シンポジウム「歴史的ピアノと音楽文化-第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールをふりかえる」
 フォルテピアノ奏者の小倉貴久子さんと、昨年このショパン国際ピリオド楽器コンクールで2位を獲得された川口成彦さん(このブログでも既にシューベルトの音源でご紹介しております。)それにショパンに関する著作「ショパンの詩学-ピアノ曲《バラード》という詩の誕生」を執筆された音楽学研究の松尾理沙さん、フォルテピアノ制作・修復家の太田垣至さんをを交えた、演奏あり、ショパンピリオド国際コンクールの舞台裏あり、お国柄やフォルテピアノについての解説や現状についての説明など、多角的視点からショパンとフォルテピアノについて語られた大変盛りだくさんの催しでした。
 そして会場の一橋大学インテリジェントホールには一台のフォルテピアノ、1848年製仏プレイエルが。ショパン自身が晩年コンサートで使用されたものと同型のピアノです。



 この歴史を感じさせるピアノに、日本を代表するフォルテピアノ奏者が会場にお二人もいらっしゃるのですから、演奏もリサイタル並みに豪華なラインナップでした。
前半)
・ショパン アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズOp.22(小倉さん)
・クルピンスキ ポロネーズニ短調
・ショパン 別れのワルツ 変イ長調Op.69-1
・ショパン バラード第2番 ヘ長調Op.38(川口さん)

(後半)
・ショパン 4手のためのムーアのアリアによる主題による変奏曲
・フンメル 4手のためのノクターンOp.99 (どちらも連弾)

 「ショパンが最も愛したピアノ」としても名高いプレイエルという名前ではありますけども、その楽器を実際に聴いたことのある方はまだまだ少ないように思います。言葉が発せられるような少しセンシティブな、繊細な音色は平行弦のおかげで(現代のピアノは交差弦)響きがにごりなく、どこかささやくような感じで、こちらの楽器で奏でるショパンは本当にうっとりとしてしまうのです。
 特に後半のお二人の連弾だなんて!まるで恋人同士がきままに、でも二人だけの世界でおしゃべりしているような幸せ満点の空間で、こういった空気と音色は残念ながら当日会場にいらっしゃった方でしかわからないと思います(私も大変貴重な体験でした!またいつかコンサートで聴いてみたい…)

 でも大満足の帰路の中、でもこういった曲も聴き放題の中に入っているのかな…とふと気になって探して聴いてみることにしました。そうしたらすべての曲がアマゾンミュージックアンリミテッドにあったにはあったのですけども…残念ながらどれも現代のピアノによる演奏で、しかもあの囁くような幸福感がなくて「メロディーは同一なれども全く別の音楽」ということで自分の中で却下…しようとしたら最後の最後にひとつだけ見つけました!それが今回の音源です。
ピアノ協奏曲第2番ヘ短調Op.21(1830年)
ポーランド民謡による大幻想曲Op.13(1828年)
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22(1836年)
 なんと97年の録音だということです。昨年ショパンのピリオド楽器コンクールが介されたというこの時代ですから、その20年以上前。相当時代を先取りしていた感じの音楽です。
 この中でエマニュエル・アックスさんが弾かれているフォルテピアノは仏エラール製で、やはりショパンの晩年を代表するフォルテピアノです。(ショパンは調子のいい時はプレイエル、そうでない時はエラールを好んで弾いていたそうです。)
 厳密なことを書いてしまえばプレイエルとエラールの響きの違いはあるものの、あの囁くようなショパンの響き、優しく撫でるような柔らかい世界の一端を垣間見るというか、聴いて体験するにはピッタリの1枚です。「アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ」と一緒に収録されているショパンのピアノ協奏曲第2番やポーランド民謡による大幻想曲も大変魅力的です。(そしてこの中でのショパンのオーケストレーションについても…あまり面白みがないと言われていますけども、この同時代のピアノによる演奏だと周囲と溶け込んでまた違って響いてくると思います。)
 そしてもし聴き放題で気に入ったならば、是非とも一度実演でどうぞ。
 小倉貴久子さん川口成彦さんも、この春にショパンに関するフォルテピアノ公演がありますから!

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